2005年10月18日
性病について
| 性 病 と は |
本来は特定の病気を指しますが、近年では性交渉によって感染する病気全体を指す事が多くなっています。
抗生剤の開発により以前より治癒(ちゆ)しやすくなってきた反面安易な性交渉や度重(たびかさ)なる感染を経て抗生剤が効かない又は効きにくい病原体が増加しています。自覚症状の強い病気は早期に、他人に感染する前に治療を受けるため減少してきていますが、自覚症状の弱い病気は治療が遅れて感染を広めています。特に女性は全般的に自覚症状が弱く、知らずに感染を広めている事もあります。
性病に限らず、感染症は一つの病原体が体内に侵入したとしても感染するわけではなく、病原体が体内で増殖して免疫(めんえき)能力を超えてしまうと感染・発症となります。
感染のルートは、多くの場合には血液や唾液(だえき)などの分泌物により感染します。傷や粘膜(唇みたいな皮膚)は、体外からの侵入に弱く病原体が入り込みやすくなっています。性交渉自体が、粘膜と粘膜を擦(こす)りつける動きなので粘膜に傷もできやすいといえます。理屈上は、病原体と傷や粘膜への接触がなければ感染の可能性はありません。
現在、性病で1番多いのが尿道炎です。これは、おしっこをする時に痛みやカユミがあり、膿(うみ)で下着が汚れたりする病気です。性交渉はもちろん、オーラルセックスでも感染する可能性があります。
もし心当りがあって、違和感や不安感がある時は早めに検査を受ける事をお勧めします。
▼よく聞く性感染症
クラミジア 淋病 エイズ(HIV)
梅毒 ヘルペス カンジタ
毛じらみ 尖圭コンジローム トリコモナス
B型肝炎 C型肝炎
クラミジアの原因はクラミジア・トラコマティスという細菌によるもので、欧米ではもっとも数の多い性感染症です。ここ数年、日本でも10~20代の女性の感染者が爆発的に増えていますので注意して下さい。性交渉により感染しますが、クラミジアは性器以外の咽喉部にも感染しますので、最近はオーラルセックスでの感染が非常に多くなっています。感染した場合でも自覚症状の無い場合があり、男性で50%・女性で80%の人が感染に気付かないと言われています。
【症状】
男性 ・・・ 排尿時に軽い灼熱感を感じます。サラサラした分泌液が出ますが、重症の場合は痛みや膿が出てきます
女性 ・・・ 排尿中に下腹部の痛みや性交中に痛みを感じます。
【潜伏期間】
1~4週間
【検査方法】
尿や分泌液を採取して検査します。
【治療方法】
抗生物質の内服による治療を行います。治療をしない場合でも1ヶ月程度で症状が治まる事もあります。症状がなくなっても治っているわけではありませんので、必ず治療をして下さい。そのままにしておくと感染者を増やすばかりではなく、不妊症の原因になります。また、クラミジアに感染している場合、通常に比べて4倍の確率でHIVに感染する事が最近の研究で報告されています。治療期間は1~2週間程度です。
淋病の原因は淋菌という細菌によるもので、性交渉により感染する性病です。淋菌もクラミジアと同じように性器だけではなく咽頭部にも感染します。クラミジアの次に多い性感染症で、クラミジアと同時に感染することがあります。
【症状】
男性 ・・・ 最初は尿道に軽い不快感があります。その後、数時間もするとおしっこの途中に強い痛みが襲ってきます。同時に粘り気のある黄色い膿も出始めます。また、おしっこの回数が増え、ペニスの開口部は赤く腫れ上がる事もあります。
女性 ・・・ 多くの場合、自覚症状はありません。症状が進行すると排尿痛や頻尿、残尿感が現れ、黄緑色や悪臭を伴うようなおりものが増えます。
【潜伏期間】
2~10日
【検査方法】
尿や分泌液を採取して検査します。
【治療方法】
抗生物質の内服による治療を行いますが、最近は通常の抗生物質では治らない淋菌も増えていますので、その場合は検査が必要になります。治療期間は1~2週間程度です。
エイズは「後天性免疫不全症候群」といわれ、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)というウィルスに感染し免疫力が低下する事が原因です。主な感染経路は性的接触による感染・血液感染・母子感染があります。
【症状】
HIVウィルスに感染した場合、2~8週間後に風邪に似た症状が一部で見られますが、特別な症状ではないので、多くの人は気が付きません。
その後は無症候性キャリアといわれる何も症状の無い期間になりますが、この間HIVウィルスは身体の中で増殖し免疫機能を低下させていきます。
その後、リンパ節が腫れ、下痢、発熱、体重の減少などのエイズ関連症候群といわれる症状が現れます。
この状態は、エイズ発症の初期段階といわれています。
【潜伏期間】
6ヶ月~15年
【検査方法】
エイズの検査は、HIV抗体の検査になりますので、感染してから抗体ができるまでに検査を受けても正確な結果は得られません。感染の可能性があった時は、抗体ができる8週間後に検査を受けるようにして下さい。
【治療方法】
エイズは発症してからの治療が困難なため、HIVウィルスの増殖を抑えるさまざまな抗HIV薬が世界中で開発されています。治療方法は数種類の抗HIV薬から3~4種類を服用する多剤併用療法が標準的な治療になります。この多剤併用療法による治療により、現在では、日和見感染症などの発症率や死亡率が低下しています。
梅毒の原因は梅毒トレポネーマという細菌によるもので、主に性交渉で感染します。梅毒は、コロンブスが新大陸発見と共にヨーロッパに持ち帰り、世界中に広がったといわれています。感染者が妊婦の場合は、胎児に感染しますので注意が必要です。
【症状】
第1期 ・・・ 性器に赤色をした小さなしこりやただれが見られ、股のリンパ節が腫れてきますが、痛みなどの自覚症状が少ないので、気付かずに見落とす事があります。
第2期 ・・・ 皮膚や粘膜に梅毒特有の発疹が出始めます。発疹以外にも脱毛や発熱、倦怠感や頭痛などを感じ、性器に無痛性潰瘍の扁平コンジロームが出来るなどの症状が見られます。
第3期 ・・・ ゴム腫といわれる結節ができ、全身のあらゆる器官に異常が見られます。脳や脊髄に影響が出ると麻痺や精神障害を起こし、やがては死に至ります。
【潜伏期間】
第1期 3週間~3ヶ月
第2期 3ヶ月~3年
第3期 3年以上経過
【治療方法】
ペニシリンの内服や注射で治療を行います。ペニシリンのアレルギーがある場合は、他の抗生物質による治療になります。治療期間は症状の段階により変わりますが、2週間~3カ月程度になります。
ヘルペスの原因は単純ヘルペスウィルスによるものです。このウィルスにはHSV-1とHSV-2の2つのタイプがあります。通常、HSV-1は口唇に感染しHSV-2は性器に感染するウィルスですが、最近はフェラチオなどのオーラルセックスにより、口から性器、性器から口への感染が増加しています。
【症状】
性器に小さな痛みのある水泡や潰瘍ができます。歩行時や排尿時に痛みなどで支障をきたしますが、2週間程度で自然に症状は治まります。
【潜伏期間】
1~2週間
【治療方法】
抗ウィルス薬による治療を行います。ヘルペスは1度感染すると、疲れた時など免疫力が低下した時に再発しますので、症状がでた時は早めの治療を心掛けて下さい。治療期間は1週間程度です。
カンジタの原因はカビの1種であるカンジタ・アルビカンスという真菌によるものです。この真菌は誰もが持っているものなので通常無害ですが、抗生物質や経口避妊薬を長期間使用した場合や身体の免疫が低下したときに発症します。女性の10%は膣内にカンジタ菌がいるといわれています。
【症状】
男性 ・・・ 亀頭と包皮が炎症をおこし、かゆみが出てきます。
女性 ・・・ 外陰部にかゆみや痛みを感じ、酒カスのような白いおりものが出てきます。
【治療方法】
洗浄をした後に抗真菌剤のクリームや膣錠で治療を行います。治療期間は2週間程度になります。
毛じらみの原因は1~2mmのしらみが陰毛に寄生する事によるものです。性交渉以外でもベットやタオルを共用したり、プールやサウナで感染する事もあります。
【症状】
毛じらみが血を吸うため、陰毛の生えている部分の皮膚に赤い斑点を伴った激しいかゆみがあります。
【潜伏期間】
1~2週間
【治療方法】
パウダーや軟膏などの塗布薬により治療を行います。治療期間は1~2週間程度です。
尖圭コンジロームの原因はヒトパピローマウィルスの感染によるものです。主に性交渉で感染します。子宮頸ガンや陰茎ガンになるウィルスとの関連もあるといわれています。
【症状】
性器に赤色やピンク色の小さなイボができます。そのままにしておくと増殖して鶏冠状やカリフラワー状の大きなイボになってきます。痛みはありませんが、稀に炎症を起こしてかゆくなる場合があります。
【潜伏期間】
1~8ヶ月
【治療方法】
手術や抗がん剤などの塗り薬を使用して治療を行います。再発をくり返すことが多いので、再発した場合は、早期の治療を心掛け、根気よく治療し続ける必要があります。
トリコモナス原虫が原因で、婦人科では比較的ポピュラーな病気です。
主にオーラルセックスを含む性交渉で感染しますが、タオルや入浴による家庭内感染も稀にあります。
男女共に自覚症状が出ない事もあり、いつ感染したか分からない事が多い病気です。
【症状】
男性 ・・・ 男性は、尿道・陰茎包皮・前立腺・精巣などに寄生していても殆ど自覚症状はありません。
しかし、自覚症状が無くてもパートナーが感染していれば本人も治療の必要があります。
女性 ・・・ 女性では、オリモノが増えて強いカユミがあります。また、オリモノも黄色く泡沫状で強い臭いがあります。
しかし、30%程度は自覚症状がない場合もあります。
症状が進行すると、オリモノに血が混じる場合もあります。
【治療方法】
パートナーの感染が判明した場合、70~80%の確率で感染していますので同時に治療する必要があります。
男性は飲み薬、女性は膣錠での治療になります。
治療期間は7~10日程度です。
B型肝炎はB型肝炎ウイルスが原因で感染します。
血液の接触で主に感染しますが、性交渉など粘膜の接触でも感染します。
多くの場合、自然治癒しますが無症状感染者(キャリアー)になる場合や、時に劇症化する場合があります。
無症状の事が多く、検査しないと感染の有無はわかりません。
【症状】
自覚症状を起こさないで自然治癒してしまう事もあります。
自覚症状が起きる場合、食欲不振・全身倦怠感・黄疸などがあります。
肝機能検査の数値も悪化します。
【治療方法】
抗ウイルス剤などの内服薬で治療していきます。
C型肝炎ウイルスが原因で感染します。
血液の接触で主に感染しますが、性交渉など粘膜の接触でも感染します。
しかし、感染力はB型肝炎ほど強くはありません。
無症状の事が多く、検査しないと感染の有無はわかりません。
【症状】
多くの場合には、自覚症状を起こしません。
自覚症状がある場合には、食欲不振・全身倦怠感・黄疸などがあります。
肝機能検査の数値も悪化します。
【治療方法】
抗ウイルス剤などの内服薬で治療していきます。
投稿者 seltage : 17:07
性感染症の現状
● 性感染症の現状、どう思いますか?
現在、行政による防疫・公衆疫学的施策により多くの感染症が広まる事無く抑えられていることには、多くの方が感じていると思います。
しかし、性交渉により感染する性感染症は同じ感染症ですが、症状が無い又は少ないため忘れがちな存在となっています。
これは、あまりにも身近であると同時に後ろめたい部分にはなかなか目を向けない感情による所が大きいと考えられます。
このような現状において、クラミジア・淋菌の罹患率は図(1)のように男女共年々増加しています。
G7先進国のなかでは、日本だけと指摘もされ特異な状態と考えられます。
更にHIV感染者数の増加にも注目するべきで、クラミジア・淋菌と同じく推移している事が将来的に大きな問題であると思われます。
図(1)

この状況を回避するために、公衆衛生学的な防疫をする事はプライバシーに触れる部分が大であることを考えると非現実的で不可能です。
図(2)(3)から見て若年者のクラミジア罹患率が年々増加していることからも、若年者への啓蒙が重要になってきています。
図(2)

(熊本センチネルサーベイランス)
図(3)
(熊本センチネルサーベイランス)
性感染症は「人類が存続する限り、最後まで存続する感染症である」と言われております。
しかし、「手遅れにならないうちに何とか増加を抑える事がわが国において必要である」とは言うまでもありません。
● 特に女性に怖い話
現在、クラミジア感染症が一番多いと言われています。
クラミジア感染症は、自覚症状が少ないため女性が放置しておくと卵管炎や骨盤内感染症を起こして不妊症や子宮外妊娠、早流産の原因となることが大きな問題になっています。
妊娠が判明したら、感染症の検査を行いますがクラミジアの罹患率は4~5%となっています。
しかし、“子宮頸ガン”の原因といわれるHPV(ヒトパピローマウイルス)罹患率は妊娠時検査の結果、図(4)のように地域に関わらずクラミジア感染症の倍以上であることがわかっています。
図(4)

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、100種類以上のタイプが確認されています。
そのなかで、16型・18型・52型をはじめ、子宮頚ガンの発症リスクが高いと考えられるタイプが13種類弱あります。
しかし、「HPVの感染=子宮頚ガン」ではなくリスクが高くなるという事です。
というのは、ほとんどは一過性の感染であり自分の免疫力によって排除されてしまいます。(図5)
図(5)

とは言え、細胞変異の初期段階にHPVが関与している事と感染の繰り返しが子宮頚ガンの感染リスクを上げる要因である事を考えると、HPV感染の有無をチェックすることは子宮頸がん予防には大切と思われます。
HPV感染は、性的にアクティブな若い人に多く、子宮頚ガンは加齢と共に発症すると考えられてきました。
しかし、図(6)を見ると、最近数年間の比較では20歳代で10倍になっており、その傾向はこの施設に限られた事ではないと考えられています。
また、ガンに至らない前ガン病変といわれる“CIN3”検査結果の割合は若年者で多くなってきています。
図(6)

(群馬県立がんセンター)
これは、大きな問題と認識されつつあり行政が行う子宮ガン検診指針(厚生労働省)でも30歳以上という前提から、近年20歳まで下げられています。
このように、無症候的に蔓延しているHPVですが臨床的に明らかな事項として、
性器のHPV感染は性交渉で伝播する。
HPVはガンを惹起する型としない型にわけられる。
HPVの繰り返しの感染はガンの高いリスクとなる。
子宮頚ガンのほぼ100%にHPVが検出される。
などがわかっています。
感染した場合には、
高リスク型HPVに感染してもガンになるわけではない。
HPV感染そのものは病気ではなく、将来的に引き起こされる病気の検査を定期的に行うことが大切。
と言われています。
また、子宮頚ガンは他のガンと違い、
①ガンの原因が明らかになっている。
②ガンの原因を検査する方法がある。
③ガンになるまでに検査で発見可能な長期間の前ガン病変状態がある。
ことにより“予防可能なガン”と考えられています。
子宮頸がんは、このようなHPV感染によって引き起こされるガンですが、まだまだ認識が薄く全国平均の子宮ガン検診の受診率は20%にいたっていないのが現状です。
その原因として、
①時間がない。
②恥ずかしい。
③時間が合わない。
④自分は大丈夫。
などが、アンケート調査で明らかになっています。
このHPV感染にまつわる子宮頚ガンは、今後も更に重要な問題の一つとなってきます。
お一人お一人が少しでも注目していただければ幸いです。
投稿者 seltage : 00:16
2005年10月02日
トリコモナス
| 解 説 |
・男女共に自覚症状が出ないこともあり、いつ感染したか分からない事が多い疾患。
・トリコモナス原虫が原因で、婦人科やSTD の中でも比較的ポピュラーな疾患である。
・膣だけではなく、子宮頸部、下部尿路、前立腺などにも侵入し、ピンポン感染を起こすにもかかわらず、男性に比べ特に女性で症状が強いこともあり、トリコモナス感染症だけではなく、HIV 感染やPID(卵管炎などの骨盤内感染症)などとの関係、早産や前期破水など妊娠経過への影響なども注目されている。
・再発を繰り返す症例も少なくない。再発の経過として、原虫の残存によるものと隣接臓器からの自己感染、パートナーからの再感染がある。
・感染者の年齢層が他のSTD と異なり非常に幅広く、中高年者でもしばしばみられるのが特徴で、無症状のパートナーからの感染によるものが多い。
・主にオーラルセックスを含む性交渉で感染するが、性交経験のない女性や幼児でも感染のみられることから、タオルや入浴、便器による家庭内感染も稀にある。
・トリコモナスは乾燥には非常に弱いが、水中ではかなり長時間感染性があるといわれている。
・感染を有する妊婦から新生児への垂直感染もある。
・膣炎では、トリコモナスだけがみられるものではなく、臭いの原因となる嫌気性菌や大腸菌、球菌の増殖をきたした混合感染の形態をとることが一般的で、膣炎の病態や臨床症状は、混合感染によって作られているといわれている。
・治療によりトリコモナスが減少、消失すると再びデーデルライン桿菌が優位となって、他の細菌の発育抑制、減少して膣内の状態が改善され治癒に向かうと考えられる。
・子宮膣部は感染による炎症で発赤し、粘膜下の血管は密で浅くなり、接触時出血をしやすくなる。
| 症 状 |
《男性》
・尿道・陰茎包皮・前立腺・精巣などに寄生していてもほとんど自覚症状がない。無症状であっても尿道の分泌物や炎症が非感染者に比べて多く、感染後の潜伏期間も10 日前後と淋菌より長い。
・トリコモナス感染を有する男性には、前立腺炎を有することが多く、トリコモナスは前立腺炎や精嚢などに棲息しており、この場合尿道に出てくることで、少量から中等量程度の分泌物を伴う尿道炎症状を呈する。
・自覚症状がなくてもパートナーが感染していれば本人も治療の必要がある。
《女性》
・男性に比べ、トリコモナス感染症の症状は非常に多様である。約50%は自覚症状がない場合もあるが、その1/3 は6ヵ月以内に症候性になるといわれている。症状が進行すると、おりものに血が混じる場合もある。
・泡状の悪臭の強い黄色いおりものの増加と、外陰、膣の刺激感、強いかゆみを起こす。

| 他 の 疾 患 と の 関 連 |
・治療薬剤への耐性株の出現なども注目されている。
・トリコモナス感染を受けた膣粘膜や発赤、びらんを有する膣部はHIV 感染に対して抵抗力のない環境であるが、クラミジア感染や淋病と同様にHIV 感染リスクを高めるとされる。
| 検 査 |
・綿棒で膣分泌物を採取し、顕微鏡と培養検査を行う。
・診断として、泡状の悪臭の強い、黄緑色の帯下が重要となるが、このような症状は半数程度の症候性婦人で認めるだけであり、膣の発赤は75% 認めることができる。
| 治 療 |
・ピンポン感染を起こすため、感染が判明した場合、70 ~ 80%の確率で感染しているので、同時にパートナーと共に治療する必要がある。
・女性に比べ、男性ではトリコモナス検出が困難で、男性パートナーでは陰性と判定されることもあるので、注意をする必要がある。
・男性は飲み薬、女性では膣錠(飲み薬)での治療となる。
・治療期間は7 ~ 10 日程度。
・治癒判定は自他覚症状の消失とトリコモナス原虫の消失を確認する。女性では次回月経後にも原虫消失の確認をする必要がある。(残存膣トリコモナスが月経血中で増殖する為)。
・予後は経口投与で90 ~ 95%の消失がみられる。同時期にパートナーとの治療を行えば良好である。
| 予 防 |
・コンドームでの感染予防が一時的には可能である。しかし、感染者とパートナーの治療を徹底することが重要である。
投稿者 seltage : 12:42
尖圭コンジローマ
| 解 説 |
・性器へのヒトパピローマウイルス(HPV)感染症で、大部分が性交あるいはその類似行為で、一定の潜伏期をおいて発症する。
・良性型HPV の6、11 型の感染による。
・HPV は接触により、皮膚や粘膜の微小な傷から侵入し、基底細胞を含む、分裂可能な細胞に感染する。
感染後視診で観察できるまでに3 週~ 8 ヶ月(平均2,8 ヶ月)を要するので、感染機会を特定できないことも多い。
・陰部から陰部への感染がほとんどで、湿った外陰部や肛門周辺に繁殖し、潜伏期間が長く、通常2、3 ヶ月で症状が出るが、6 ヶ月という場合もある。
・尖圭コンジローマと癌の原因となるHPV には相違があり、発癌と関連の深い型のHPV は悪性型と呼ばれる。
・尖圭コンジローマはHPV6 型、11 型の感染によるが、ときに皮膚型のHPV による疣贅が外陰部にみられることがある。この他に主としてHPV16 型の感染によるボーエン様丘疹症、性器ボーエン病がある。
・HPV は、現在90 種類以上の遺伝子型に分類されており、その中で性器病変、あるいは性器から検出される型は40 種類以上に及ぶ。この中で子宮頸癌の高リスク型としてはHPV16、18、31、33、35、39、
45、51、52、56、58、59、68、73、82 型が、中間リスク型としてHPV26、53、66 型があり、
低リスク型にはHPV6、11、40、42、43、44、54、61、70、72、81、89 型がある。
・妊婦がヒトパピローマウイルスに感染すると、少数例であるが母子感染をきたす事もある(1%以下)。
ほとんど良性だが、近年子宮頸癌、陰唇癌などの関連性があるといわれている。
・性感染症であるために大部分は性活動が盛んな生殖年齢に多くみられる。しかし、最近では初交年齢の低下に伴い、10 代後半の女性にも認められるようになったという報告もある。
・尖圭コンジローマ自体は良性腫瘍であり自然治癒することもあるが、HPV16、18、52、58 型は子宮頸部に感染し子宮頸癌の発癌の要因になると考えられている。
| 症 状 |
・HPV 感染後約3 ヶ月程で、自覚症状として、先の尖った硬い腫瘍(いぼ)が、男性では、陰茎の亀頭、
冠状溝、包皮、陰裏、女性では大小陰唇、膣前庭、膣、子宮頸部に発生。また、男女とも肛門周囲、肛門内や尿道口にも好発し、さらに直腸内に発生することがある。まれにHPV が外尿道口から逆行性に感染して、尿道や膀胱内に尖圭コンジローマが発生することがある。
・一般的に自覚症状がなく、ほとんどがいぼを認めるのみであるが、大きさや発生部位などにより、疼痛や掻痒、性交時の痛みや出血が出現することがある。
・接触により出血しやすく、2 次感染を伴うとただれ、壊死を起こし悪臭を放つことがある。
・下着やジーンズのような硬い着衣で擦れて痛みを感じることもある。
・肛門内の尖圭コンジローマは、同性愛者の肛門性交によることが多い。
・形態は鶏冠状、丘疹状(表面顆粒状)などと多彩で、色は角化の程度により淡紅色、褐色と様々である。
大きさは米粒大から母指頭大まで多様な先のとがったザラザラしたいぼ状で、かゆく感じるものから、
ヒリヒリした痛みを感じる程度まであり、数は単発のこともあるが、多くは多発して全体が腫れあがり、
カリフラワー状になる。
| 臨 床 的 特 徴 |
・HPV 型は疾患または感染部位により皮膚型、疣贅状表皮発育異常症(EV 症)型、性器・粘膜型に3 分類できる。皮膚型は尋常性疣贅、扁平疣贅など皮膚に発生する疣贅疾患の原因となり、EV 症型は皮膚に疣贅が多発し、それらのうち、日光に曝露する頂部や頭部の疣贅が癌化するという特殊な遺伝性疾患から、もっぱら分離される。性器・粘膜型は、性感染症の原因HPV で、尖圭コンジローマを起こすHPV6、11 型もその中に含まれる。
・性的接触などにより皮膚・粘膜の微細な創面から侵入したHPV は、表皮の基底細胞に感染し、自己複製を始めるとともに、HPV の初期遺伝子産物が感染細胞に働き、増殖を促す。その結果、感染部位に尖圭コンジローマなどの疣贅病変(隆起性病変)や異形成上皮(非隆起性病変)を形成する。ウイルス抗原や粒子はそれら上皮の上層部にのみ認められるため、ウイルス粒子の生成は上皮の分化機構に依存するものと考えられる。
・統計では子宮頸部異形成のうち10 ~ 20%が進行し、残りは消失する。進行するのはHPV16、18、31
型などだと考えられている。自覚症状に乏しいことが多いため、無意識のうちにHPV を広めてしまう可能性がある。
| 診 断 |
・尖圭コンジローマの診断には、原因ウイルスであるHPV を証明することが望ましい。しかし、HPV の
ウイルスの分離と培養が不可能であるため、HPV の検出には、そのウイルスのDNA を決定する方法が行われている。
| 再 発 率 |
・尖圭コンジローマはウイルス性疾患なので、治療後の再発が問題となる。
・電気焼灼の施行例では18.3%、その再発までの期間は平均3 ヶ月である。
・再発の理由は、治療後、肉眼的に尖圭コンジローマの病変を認めなくても、深く上皮にHPV が存続することがあるからである。また、病変部位周囲の正常組織にもHPV が存在し、ある期間を経てその部位から尖圭コンジローマを形成することも考えられる。
| 悪 性 化 |
・尖圭コンジローマが長い潜伏期間を経て性器癌に悪性化することもある。陰茎癌は子宮頸癌とともにHPVとの関連性が示唆されている。
・HPV は健常人の性器に数%の割合で、潜伏感染しており、特に性活動の盛んな若い年齢層に広く蔓延している。HPV が無意識のうちに性的パートナーに感染し、その一部からは尖圭コンジローマ、さらに性器癌が発生してくるとすれば、HPV は初期の段階から重要な役割を担っていると思われる。
| 予 防 |
・性交の時にコンドームを使用することにつきる。
・感染していない性的パートナーへ感染する危険性があるので、パートナーの検査も必要である。
投稿者 seltage : 12:14
性器カンジタ症
| 解 説 |
・カビの一種である、カンジダ属という真菌が増殖して起こる。
この真菌は誰もが皮膚や口、肺、腸などに寄生しているが、健康な時には炎症を起こすことはない。
・女性に特有な疾患であり、男性の罹患例は少ない。
・膣内にカンジタを保有しているからといって、必ずしも治療は必要ではない。外陰や膣にカンジタを認め、かゆみや、悪臭のない白色、ヨーグルト状のおりものが増えるなどの症状が出た場合、性器カンジタ症と診断し、治療を行う。
・妊婦の膣内カンジタ保有率は約30%で、その中でかゆみなどの自覚症状や外陰・膣の炎症を起こし、治療が必要と判断されるものは15 ~ 30%程度である。
・妊娠36 週以降で、膣より大量のカンジタが検出された場合は、産道感染の防止を目的として治療することが勧められている。カンジタの羊水や産道感染により、胎児への口腔粘膜へ感染すると、鷲口瘡が生じる可能性がある。
| 原 因 |
・身体の免疫が低下した時や過労、妊娠、ダイエット、抗生物質の長期服用、経口避妊薬、ステロイド剤の投与、糖尿病などが原因で発症する。
・性行為が原因で発症するのは数%である。
・膣内を洗いすぎると、膣の自浄作用が低下して、カンジタが増殖することがある。
・外陰・膣カンジタ症の約5%は、性交感染が原因であるが、性交渉のみで感染するものではなく、パートナーの定期的追跡は必要ない。
| 症 状 |
《女性》
・女性の10%は、膣内にカンジタ菌がいるといわれている。
・おりものが増え、膣内や外陰部がかゆくなる。かゆみが強く、ひっかいて外陰炎を起こすと、赤くただれて痛みがひどくなる。
・外陰や膣の灼熱感、痛み、性交痛、排尿障害を訴えることがある。
・酒粕状、粥状、ヨーグルト状のおりものがみられ、膣壁、頸部に塊状に付着する。これらの症状は他の外陰・膣疾患でも見られることがあり、外陰膣カンジタ症に特異的な所見ではない。
・糖尿病に合併した例やステロイド剤投与例などでは。膣よりも外陰部、股部の炎症が強く、湿疹様の症状が出る。
《男性》
・性器にカンジタを保有していても、男性の場合、症状を呈すことは少ない。
・主な病型は亀頭炎であり、かゆみや違和感、軽い排尿痛があるだけで、ほとんど感染に気がつかず、まれに尿道炎を起こすことがある。
・他覚的には、冠状溝周辺、亀頭に発赤、紅色丘疹、小水疱、びらん、浸軟、白苔をみる。
・包茎、糖尿病、ステロイド剤使用が原因である場合がある。
| 検 査 |
《女性》
・綿棒でおりものを採取し、顕微鏡や培養検査で診断する。
《男性》
・顕微鏡や培養検査で診断する。検査部位は、亀頭冠状溝、その周囲を綿棒で擦過する。
| 治 療 |
・膣内に抗真菌剤の膣錠を挿入し、外陰に症状のある場合は軟膏・クリームの外用薬を併用する。治療期間は2 週間程度です。
| 再 発 |
・膣錠などを用いた治療により、膣内カンジタが一時消失しても、自己腸管に存在するカンジタが外陰部を経て膣内へ侵入し、新たに膣に感染することがある。
・再発を繰り返す例では、内服薬に変更する。(膣錠を使っても効果がない場合等に)
| 治 療 判 定 |
・治療により、かゆみやおりものなどの症状が消失したものを治癒とする。
カンジタが消失したものだけではなく、少数存在しているものも含まれる。
| 予 後 |
・カンジタによる病変は、通常外陰部や膣に留まり、骨盤内や全身感染症には至らない。1 ~ 2 週間の初回治療により、85 ~ 95%は治癒に至る。
・少数例は再発を繰り返す。
・再感染の感染経路の一つは、自分の腸管に存在するカンジタが肛門から外陰部を経て新たに膣に自己感染する経路で、他は、性感染の経路で男性から新たに感染した場合である。
・性交渉による感染の場合、パートナーも同時に治療しないと感染を繰り返す。
| 予 防 |
・局所の清潔を保ち、刺激性石鹸の使用禁止、通気性の良い下着を使用し、急性期には性交渉を避け、安静にすることを勧める。
| 最 後 に |
・性器カンジタ症は、性感染症としてもとらえられるが、日和見感染症であるという側面をもつ。検査結果で性器よりカンジタが検出されたからといって、性器カンジタ症であるとはいえない。
※日和見感染:抵抗力が落ち、通常なら感染しないような弱毒病原体に感染すること。
通常の健康な状態では感染しても細菌に病原性がないので、発病しない病気であるが、HIV に感染していたり、何らかの影響で免疫機能が低下している時に細菌に感染すると生命の危機に陥る危険性のある感染症。
投稿者 seltage : 11:56
2005年10月01日
クラミジア
クラミジアは最も多い性感染症で、最近の報告では18 歳から19 歳の女性の10 人に3 人がクラミジアに感染しているといわれています。
20 代では20 人に3 人です。女性の感染者の5 人に4 人までが自覚症状がありません。
放置しますと、卵管炎などを起こし不妊症の原因になります。パートナーの多い方は自覚症状がなくても年に1 回の検査が勧められています。
おりものの変化、排尿痛、排尿時の違和感がある方は、ぜひ検査をお受け下さい。症状はしばらくするとなくなりますので、知らずしらずのうちにパートナーに感染してしまいます。
感染している場合はパートナーにも検査を勧めて一緒に治療して下さい。
治療しなければ何年も人に感染させてしまいます。
| クラミジア感染症 |
いくつかの種類がありますが、感染者の激増しているのは「クラミジア・トラコマティス」というタイプで、
多くは、性行為により性器粘膜で感染を起こします。
オーラルセックスで口中にクラミジア菌が感染すれば咽頭炎・慢性の扁桃腺炎などを起こし、風邪のような症状がでます。
菌があるところに接触すると感染しますので、性器に感染していても口中に菌がいなければキスでうつることはありません。
また、眼の粘膜に感染して、トラコーマという結膜炎を起こしたり、妊娠時に感染した場合、乳児の呼吸器に感染してクラミジア肺炎を起こすこともあります。
妊娠中の女性の場合は、このような母子感染をするので、注意が必要です。
クラミジアは、喉、直腸、尿にもでるので、口、肛門、尿を使った性行為も危険です。感染者はHIV(エイズ)への感染率が通常の3 ~ 4 倍になるという統計もあるので、検査する際は併せてエイズ検査もすることを勧めます。
パートナーが1 人だからといって安心できないし、性行為をした人は誰でも、たった1 回の性行為でも感染する可能性があります。
しかし、コンドームなどの使用による性器粘膜の接触を伴わない行為や、お風呂場や空気感染などの間接的な感染はほとんどありません。
<主な症状>

クラミジア・トラコマティスの感染経路と病態

★尿道炎
・潜伏期間は1 ~ 3 週間と長く、症状も軽い。(症状:軽い排尿時痛、水っぽい膿が尿道から出る。)
・放置すると前立腺炎、精管炎などを引き起こすこともある。
★精巣上体炎
・一般に症状は軽度であり、発熱もはっきりしないことがある。軽度の陰嚢部痛があり、精巣上体全体に腫脹と圧痛を認めることが多い。
★子宮頸管炎
おりものと不性器出血が症状としてあらわれる。しかし、この段階では下腹部などで痛みを感じることは少なく、自覚症状を伴わないことが多い。白色の水っぽい膿がおりものとして出てくる。不性器出血は、頸管分泌物の混じった少量の持続性の出血をみることもある。
★子宮付属器炎
クラミジアに感染して比較的早い時期に発症することが多い。下腹部に軽い痛みがあり、子宮頸管炎の症状を伴うことが多い。
★骨盤腹膜炎
下腹部の痛み、性交時に痛みを強く感じるようになる。
★肝周囲炎
上腹部に激しい痛みを感じるようになる。
★不妊症、流産の原因の恐れも
・女性がクラミジアに感染した場合、その体の構造から速やかに上腹部へと感染が浸透していき、短期間に腹腔内へ波及する恐れがあります。
・感染初期には自覚症状がなく、治療対象にならないものが、長期間を経て骨盤腔へ波及し、卵管閉塞、卵管周囲癒着を引き起こし不妊症の原因となる傾向がある。
・不妊症患者の所見を見るとクラミジア抗体陽性者の80%に卵管周囲の癒着が認められ、60%に卵管閉塞が認められている。
・妊婦に感染するとプロスタグジンを活性化させ、陣痛誘発させ、この為妊娠初期では流産の原因となり、妊娠中期では早産の原因となる。
| パ ー ト ナ ー の 理 解 と 協 力 |
重要なのは、セックスパートナーの理解と協力です。本人だけが完治しても再発を繰り返す可能性が強いので、パートナーも一緒に検査を受けて同時に治療を行う必要があります。パートナーが複数あるような場合は再感染がおこりやすいので2 ヵ月に1 度は、クラミジア・トラコマティスにかかっていないかを調べてもらうことがよいでしょう。
| コ ン ド ー ム が 予 防 の 決 め 手 |
① 25 歳以下の若年女性
② 3 ヵ月以内に新しいセックスパートナーor1 年以内に2 人以上のセックスパートナーのいる女性
③ コンドーム未使用者
④ 経口避妊薬(ピル)使用者
⑤ STD の既往のある女性
⑥ commercial sex worker
⑦人工妊娠中絶目的の女性
に感染することが少なくありませんが、性行為の最初からコンドームをきちんと使えば感染を防げます。(オーラルセックスでも同様)
| 最 後 に |
クラミジア感染のこわいところは、エイズのような命取りの病気ではないと油断していると、自覚症状がほとんどないので、感染や発病に気付かないまま進行し、治療しなければ何人も感染させたり、不妊症という重大な結果を招くことです。妊娠を望む女性は、まめにクラミジア検査を受けることをおすすめします。
投稿者 seltage : 20:58
淋病
| 解 説 |
・淋菌による性感染症で、男性の尿道炎と女性の子宮頸管炎が最も多い。
・淋菌は高温にも低温にも弱く、炭酸ガス要求性であるため、通常の環境では生存することができず、性感染症として、人から人へ感染するのが、主な感染経路である。
・重症例では、淋菌が管内性に上行し、男性では精巣上体炎、女性では淋菌性骨盤内感染症(PID)を起こすこともある。
・頻度は低いが、淋菌の菌血症から全身性に症状を伴う播種性淋菌感染症も引き起こす場合がある。
女性では腹膜炎を合併して肝周囲炎を、産道感染により、新生児結膜炎を引き起こすこともある。
・最近、オーラルセックスの増加に伴い、咽頭での保菌や感染が問題となっている。
・男女とも、性器に淋菌が証明された20 ~ 30%に淋菌の咽喉頭での検出がみられている。淋菌性結膜炎や直腸炎などもみられることがある。
・1 回の性行為による感染伝播率は約30%といわれている。淋菌に一度感染しても免疫は得られず、
再感染する。
・男性の淋菌感染症の罹患率は20 歳代後半にピークを認めるが、どの年代も羅患率は年々上昇傾向にあり、注意が必要である。
・女性の罹患率におけるピークは20 歳代前半に認め、10 歳代後半の罹患率は20 歳代後半より高く、 女性においては、男性に比べ、より若い世代に感染者が分布している。男性と同様にその罹患率は年々上昇傾向にある。
・先進国の中で、このように淋菌感染症が増加傾向を示しているのは、わが国のみといわれている。
| 淋 菌 感 染 症 の 病 態 |
| 淋 菌 が 原 因 と な る 疾 患 |
① 尿道炎
② 精巣上体炎
③ 子宮頸管炎
④ 骨盤内感染症(PID)
⑤ 咽喉頭炎
⑥ 結膜炎
⑦ 直腸炎
⑧ 播種性淋菌感染症(DGI)
| 臨 床 症 状 |
《男性》
〈淋菌性尿道炎〉
・感染機会から2 ~ 7 日の潜伏期間の後、尿道口より濃い黄白色の膿性の分泌物が多量に排出され、排尿痛や尿道口の発赤などの症状がみられる。
・20 ~ 30%はクラミジア感染症を合併している。
〈淋菌性精巣上体炎〉
・淋菌性尿道炎が治療されないと、尿道内の淋菌が管内性に上行し、精巣上体炎を起こす。
・初めは片側性であるが、治療されなければ両側性となり、治療後に無精子症を生じる場合がある。
・炎症症状は強く、陰嚢は手挙大に腫大し、局所の疼痛は歩行困難を訴えるほどである。
・尿道炎では発熱は認めないが、精巣上体炎を起こすと、発熱、悪寒戦慄、白血球増多症などの全身性炎症症状を伴う。
・尿道炎の場合と同様に、淋菌性精巣上体炎にクラミジア感染を合併している場合があるが、有効な薬剤が異なるので、淋菌とともにクラミジアの検査も行う必要がある。
《女性》
〈淋菌性子宮頸管炎〉
・淋菌の子宮頸管感染により分泌物を生じるが、症状や徴候がみられないことがあるので、感染女性の多くは自覚症状がなく、男性の淋菌性尿道炎と異なって、潜伏期も判然としないことが多い。
・粘液性、膿性の分泌物が外子宮口付近にみられる場合もあり、感染がバルトリン腺や直腸に及ぶ場合がある。バルトリン腺炎では局所の腫大、疼痛などの炎症症状が著明である。
・感染が管内性に拡大して骨盤内炎症性疾患を起こすと、半数程度に発熱、腹部仙痛による急性腹症を生じ、治りづらい膿瘍を形成したり、長く続く子宮の痛みや不妊の原因になったりする場合もある。
・一般的に、女性は感染しても無症状の場合が多いので、無治療のまま、男性の淋菌感染症の主たる感染源となることが多い。
〈骨盤内炎症性疾患(PID)
・子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)、骨盤腹膜炎等がある。
・淋菌による骨盤内炎症性疾患の病態(発熱、下腹部痛、局所の自他覚症状)は、クラミジアによるものより強いが、症状が自覚されない場合があり、注意を要する。
《男性・女性》
〈淋菌性咽頭感染〉
・オーラルセックスの増加により、淋菌が咽頭から検出される症例が増加しており、男女問わず、 性器淋菌感染者の約30%の咽頭から淋菌が検出される。
・淋菌が咽頭に感染していても炎症症状が自覚されない場合が多い。
・咽頭の淋菌感染は、治療後の性器感染の再発の原因となるので、感染機会がなく再発した場合には、咽頭感染も疑うべきである。
・オーラルセックスで口中に淋菌が感染すれば、咽頭炎などを起こし、風邪などの症状がでる。
〈播種性淋菌感染症(DGI)〉
・菌血症を伴う全身性の淋菌感染症である。
・関節炎、皮膚炎症候群では、典型的には軽度の発熱、倦怠、移動性多発関節痛、いくつかの膿疱性皮膚病変を四肢末端に起こす。
・まれに心膜炎、心内膜炎、髄膜炎および肝周囲炎が起こる。
〈淋菌性結膜炎〉
・淋菌による眼感染症は新生児に最も頻繁に起こる(分娩時の産道感染による)。成人ではまれであるが、重症の化膿性結膜炎を引き起こす。淋菌との直接接触、または淋菌感染中の性器からの自家接種により起こる。
・通常は片眼性である。症状としては重篤な眼瞼浮腫に続く、結膜浮腫と大量の膿性浸出物などがみられる。感染後12 ~ 48 時間で発症するとされている。まれな合併症として角膜の潰瘍や膿瘍、穿孔などのほか、全眼球炎や失明などがみられることがある。
〈淋菌性直腸炎〉
・肛門性交によって起こる。
・直腸の淋菌感染症の症状としては、肛門のかゆみ、痛み、出血、分泌物、ときに腹痛がみられることがある。
| 感 染 経 路 |
・性行為、キス、オーラルセックスにより感染する。タオルや衣類からも感染する可能性がある。
・感染源においては、風俗女性が60%を占め、一般女性の40%より多い。
・膣性交のみが23.8%、口腔性交のみが43.9%、その両方が32.3%である。
・淋菌性尿道炎においては、口腔性交のみを介した感染者の方が膣性交のみを介した感染者より多い。
| 検 査 |
《男性》
a. 淋菌性尿道炎
b. 淋菌性精巣上体炎
・簡易尿テスト(尿沈渣白血球は多数認められるが、中間尿が採取された時は白血球を認めない場合があり、尿検査時は、初尿を採取する。)
・PCR 法(DNA を使った方法)
《女性》
a. 淋菌性子宮頸管炎
・子宮頸管からの検出は、膣鏡を用いて頸管にスワブを挿入し、膣壁にふれないように抜去して検体とする。
《男性・女性》
淋菌性咽頭感染
・淋菌の検出は、両側扁桃陰窩、咽頭後壁を擦過して採取した咽頭スワブを検体とする(SDA 法)
| 治 療 |
・特に、淋菌性尿道炎に対する治療においては、抗生物質を内服するより、注射薬の十分量を1 回のみ投与し、淋菌を確実に除菌する単回投与療法が推奨されている。
a. ペニシリン系抗生剤 約7~10日間
b. スペクチノマイシン系,セフェム系 点滴
c. アジスロマイシン 単回投与(内服)
・症状が全くなくなっても、副作用が出ない限り、抗生物質は医師に処方された分をきちんと服用しきることが大切である。途中で服薬を中止すると、再び淋菌が勢いを盛り返し、完治しない可能性がある。
耐性菌が増加しており、内服の単回投与、注射の単回投与をすすめてます。治療後、1 ヶ月後くらいに症状消失していても尿検査で淋菌の消失を確認してはじめて、治癒したものと判断するのがよいです。
| 予 防 |
・性交渉においては、最初から最後までコンドームを使用すべきである。ただし、コンドームはすべての性感染症を完全に防ぐものではない。破れたり、はずれたりする可能性があるからである。また、感染部位が、コンドームに覆われない部位にあった場合には、その感染部位から感染してしまう可能性がある。
・自分が淋菌感染症あるいは、他の性感染症であることがわかった場合には、パートナーに告げて、性感染症の検査を受けることを勧めるべきである。相手も重い合併症となる危険性を減ずることができ、自分も相手から再び感染させられる危険性を減ずることができる。
| 最 後 に |
・古典的な性感染症の1 つである淋菌感染症が最近わが国では増加傾向にあり、その増加の要因として感染源や性交形態の変化、各種薬剤耐性淋菌の増加などがあげられる。
淋菌感染症のさらなる蔓延を防ぐためには、コンドームの正しい使用が重要である。
投稿者 seltage : 19:03
ヘルペス
| 解 説 |
・性器ヘルペス感染症は、単純ヘルペスウイルス(1 型・2 型) を病原とする性感染症である。
・単純ヘルペスウイルスに感染しても80 ~ 90% の人はすぐには症状が現れません。感染してから数年~数十年後に症状が出る場合( 再発) もある。中には、ウイルスに感染後、数日で症状が出る人もいる。この場合は再発時と比べて痛みや水疱、腫瘍などの症状が重く、治癒までの期間も2 ~ 3 週間と長めである。
・女性は性器クラミジア感染症に次いで第2 位の感染状況。男性の場合には淋菌感染症、性器クラミジア感染症に次いで第3 位。性感染症の中でもとても重大なものといえる。
・一度感染したヘルペスウイルスは、口唇ヘルペスの場合、三叉神経に永く潜伏し、神経に沿ってしばしば再活性化して再発し、口唇に腫瘍を作るように、性器ヘルペス症の場合も腰骨随神経節に潜伏し、しばしば外陰腫瘍を形成し再発する。感染後、また再発後も抗体が作られ自然に治癒するが、抗ヘルペスウイルス剤などの投与により、治癒されるまでの期間が短縮され症状も軽減される。しかし、殺菌的には働かない為、再発は同じように起きる。
・成人では80 ~ 90% が不顕性感染といわれており、成人女性の70% が30 才までにヘルペスウイルス抗体を保有している。
| 臨 床 的 特 徴 |
・外部から入ったウイルスによる感染で感染後3 ~ 7 日の潜伏期の後に外陰部に小水疱または浅い潰瘍性病変が数個出現する。発熱などの全身症状を伴うことが多い。
・2 ~ 4 週間で自然治癒するが、治癒後も月経・性交その他の刺激が誘因となって再発を繰り返す。再発疹は外陰部の他、殿部、大腿にも生じる。
| 病 変 部 位 |

| 臨 床 症 状 |
臨床症状により、急性初発型、慢性再発型、誘発型、無症候型の4 つに分類される。再発を繰り返すうちに症状は軽くなっていく。
〈急性初発型(感染しても70 ~ 80% は無症状)〉
・HSV に初めて感染して性器ヘルペスを起こす
・感染機会の2 ~ 10 日後で軽い掻痒から始まり、全身症状として発熱・頭痛や倦怠感、性器に発赤・水疱・びらんが出来て激しい痛みを起こし、また足のつけ根のリンパ節の腫れ、圧痛、歩行困難、排尿困難や排尿痛などの症状が出てくることもある。口内炎や咽頭炎を合併することも多い。
・ごく稀に項部硬直、羞明や頭痛が生じ、無菌性骨髄膜炎を起こすことがあり、また、ウイルス血症を起こして全身感染を起こすことがある。
・早期に正しい治療を受ければ、1・2 週間で治る。
・急性初発型が治癒したのち、約1/3 が慢性再発型に移行する。この場合、疲労・月経・風邪などで体調が悪くなると、反復性の性器ヘルペスを起こし、他人に感染させる不安もある。
〈非初発感染初発〉
・症状の出現は初めてではあるが、すでに感染していたHSV が全身的あるいは局所的な免疫抑制状態になった時に、再活性化されて、病変を形成した場合。
・免疫抑制状態は抗癌剤や副腎皮質ホルモンなどの薬剤の投与、下腹部の放射線照射や手術、妊娠などによってもたらされることが多いが、このようなことがなくてもストレスなどが誘因になることもある。HIV 感染者やAIDS 患者では免疫能の低下に伴って、ヘルペス病変がしばしば出現することが知られている。免疫抑制の程度が強いと病変も広く、治りにくい。
〈再発型〉
・潜伏しているHSV の再活性化により繰り返し再発することが特徴。
・症状は比較的軽く、1 週間以内に治癒することが多い。時には10 ~ 14 日も治らない例もある。
・急性型の既往がはっきりしない場合もある。
・病変は、小さい潰瘍性病変や集簇性の小水疱である。病変のできる部分はだいたい同じであるが、時に少しずれたり、反対側にできることもある。
・腰痛・下肢のしびれ感など再発の前駆症状が数日前より起こる。
・亀頭を除く陰茎部に好発する。
・性器ヘルペスに初感染後、同じ仙骨髄神経節領域の殿部に、またまれに足底に再発型として発症することもある。
・再発のきっかけとなるのは、ストレスや女性では月経などである。再発の回数は、月に2 ~ 3 回というものから、年に1 ~ 2 回というものまで、いろいろある。
〈誘発型〉
・知らないうちにかかっていたHSV が、抵抗力が著しく落ちた時に再活性化して起こるもので、急性初発型と同様に激しい症状を起こす。
・骨髄内の神経節に何年間も潜伏していたHSV が激しい疲労、ステロイドや抗癌剤の投与、糖尿病の悪化などで免疫力が低下すると再活性化する。
〈無症候型〉
・自覚症状がないのに、不定期に性器からHSV を排出するので注意が必要。
| 症 状 |
・感染しても全く症状がない事があるが、症状のある場合はウイルスの入った部分がむず痒くなり、数日すると細かい水疱が出来、ズキズキ痛む。痛みは10 日位続き、時には激痛になる。やがて乾いて治ってくるが、ウイルスは体に残り、抵抗力が弱くなったりすると再発する。
・疲労時など他の病気と合併して発症することが多く、繰り返し発症する場合もある。
| 妊 婦 |
・妊娠中に感染すると胎児に感染し、死産になることもある。ヘルペスに感染したことのある妊婦は、分娩方法などについて医師に必ず相談する必要がある。
・出産時に産道を通して胎児に感染することもある。
| 新 生 児 |
・母親が妊娠中に初めてヘルペスに感染し、新生児がさらにヘルペスに感染すると生後から1 ヶ月後に発症する。
| 感 染 性 |
・傷が完全に治らない間(1 ~ 3 週間) は他人に感染させる危険がある。
・再発しても症状がないと気がつかないまま他人に感染させてしまう。
・唇などにヘルペスの症状があるとヘルペスウイルスが陰部に感染する。
| 免 疫 |
・初回感染で抗体ができるが再発を抑えることはできない。
〈性器ヘルペスの無症状時のウイルス排泄〉
性器に病変( 潰瘍・発赤・疼痛等) がある時は、コンドーム無しの性行為でパートナーにウイルスを感染してしまうのはよく知られています。
最近は症状はないがウイルスを知らないうちに排泄していることが問題となっております。
特に初めて感染した時は症状が治っても3 ヶ月以内は高率でウイルスを排泄しているとされています。また、再発時の前後1 週間も高率に排泄しているとされております。
それ以外の症状がない時期では全体として1 ~ 4% の日数が知らずにウイルス排泄しているとされています。
これらのことからたとえ病変・症状がなくてもパートナーに感染させる可能性があることを常に忘れないようにしましょう。
対策として症状出現時の性行為はさけ、その治癒後1 週間位も避けていただくのが良いかと思います。
無症候性ウイルス排泄に対してはコンドームの適切な使用による回避が最も有効です。
ヘルペスウイルスは家庭内の日常生活で感染することはほとんどありませんので、過度に不安を持つことは必要ありません。ただ症状が出現している時などはタオルの共用などは避けた方が良いと思われます。
| 治 療 |
・できるだけ早期に十分量の抗ウイルス薬を投与する。
・抗ウイルス薬を5 日間使用しても改善傾向がない場合、細菌の二次感染を合併しているか他の疾患を考える。
・抗ウイルス剤:ウイルス自体を殺すのではなくウイルスの増殖を抑制し、臨床症状の持続期間を短縮させる。
そのために早期診断、早期使用することが大切。
・軟膏・内服薬・点滴静注薬があり、症状に応じて使い分ける。
| 日 常 生 活 で の 注 意 |
・治っても再発してしまうことがあるので、ピリピリなどの刺激感やかゆみを感じた時点で、早めに適切な治療を受けることにより、ウイルスの活動を抑え、きれいに治すことができます。
・皮膚症状が出ていない時は、感染することはありませんが、水疱や腫瘍ができている時は、ウイルスが皮膚に出て活動している証拠なので、これがかさぶたになってはがれ落ちるまでは、性交渉などの接触は避けるべきである。
・体力が低下したのをきっかけに再発するので、普段から規則正しい生活を送り、過労・風邪・ストレスなどを寄せ付けない生活を心がける必要がある。深酒・性交・時差などでも再発しやすい。
・アトピー性皮膚炎などの皮膚のバリアー機能が低下している者や、外陰部に皮膚炎などの病変を持つ者は感染しやすい。
・当然、性交やキス・オーラルセックスなどの行為は避けるべきである。
・感染能力は極めて高く、直接接触のみならず、間接的な接触でも感染が成立する場合もある。すなわち手指を介して感染、タオル・浴用チェアや便座・食器などを介しての感染も成立しえる。患部に触れたものは全て感染源となる。しかし、このようなタオルや食器などの感染能力は持続性はなく、洗浄・洗濯後には感染能力を失う。発疹が見られる場合、特に殿部では、局所をガーゼなどで覆いタオルの共有を禁ずる。
・HSV の場合、生体から離れたウイルスは紫外線、熱・エーテルなどの有機溶媒で容易に感染症がなくなる。したがって風呂の湯からは感染しない。
・抑制療法中であってもコンドームの使用が勧められている。しかし、再発は肛門・頸部・太腿などにも起こりうるので、コンドームの使用だけでは完全に防止できない。
・患部を清潔に保ち、むれないように気を付け、傷が痛む時には下着はきつくないものにする。患部がかさぶたになるまでは下着をお湯で洗って清潔にし、日光によく当てて乾燥させる。
投稿者 seltage : 16:17
梅毒
| 解 説 |
・梅毒トレポネーマ・パリダム(TP)という病原体によって起こり、主として性行為(キスも含む)などで
感染します。
・顕性梅毒(皮膚や粘膜症状がある)と潜伏梅毒(症状なし)が大半である。
・TP によって、主に陰部から陰部へ移って感染する。稀に口から口へ感染することもあり、乳首、輸血からの感染例もある。
・稀に衣類や食器、カミソリなどから感染することもある。
・皮膚や粘膜の小さい傷から感染し、やがて内臓・心血管系・骨・中枢神経など、全身の器官が侵される病気である。
・温度や湿度の変化に弱く、死滅することが多く、殺菌剤でも簡単に死滅する。
| 梅 毒 の 一 般 的 経 過 |
(A)顕症梅毒
梅毒の病原体TP が感染して9 週までを第1 期梅毒、9 週より3 年までを第2 期梅毒、感染後3 年以上を第3 期梅毒という。感染後10 ~ 15 年経つと脳と脊髄に変化をきたし、変性梅毒または第4 期梅毒と呼ぶ。
潜伏期:3 ~ 6 週間


(B)無症候梅毒
・臨床症状は認められないが、梅毒血清反応が陽性のものをいう。
・TPHA 法またはFTA-ABS 法によって、生物学的偽陽性(BFP)を除外する必要がある。
BFP は、膠原病、リウマチ熱、妊娠などで見られる。
・初感染後、全く症状を呈さない場合や、第1 期から2 期への移行期、第2 期の発疹消退期や陳旧性梅毒などの場合がある。陳旧性梅毒の中には、治療を要しないものも数多くある。
(C)HIV 感染に併発した梅毒
・細胞性免疫不全によるトレポネーマへの宿主の防御機能低下のため、潜伏期間が短縮する。
・病期が異常に早く進行するため、第1 期から3 期まで通常3 年かかるのが、エイズ患者では数ヵ月で
経過し、神経梅毒へ速やかに進展していくこともある。
・梅毒血清反応の定量値が異常な高値や低値を示したり、激しく変動することがある。
・梅毒血清反応が陽性を呈しない場合もあり、特に血液製剤によるエイズ感染者は、ほとんど陰性である。
・病巣は重篤化し、水疱、膿疱、深い潰瘍が広範囲に発生し、治療に抵抗する。
| 主 な 初 期 症 状 |
《女性》
・性的接触2 ~ 3 週間で陰部(大小陰唇や膣の内側)に汚い分泌物をかぶった固いしこりが発生する。
痛みはない。
・続いて鼠径リンパ節が腫れるが、痛みはなく、放置すれば自然に消える。
《男性》
・しこりは包皮や陰茎などに発生し、その後、表面が破れて、びらんや潰瘍になる。太もものリンパ節が腫れ、
梅毒性リンパ節炎になるが痛みはない。
・しこりは放置しておくと治ってしまうので、気にしない人がいるが、放置すると第2 期梅毒に進行して
しまい、治りにくくなるので注意する必要がある。
・2 ~ 3 ヵ月後には、全身に発疹などの皮膚症状や外陰部などに小豆大のできものが現れる。
潜伏期と症状がでる時期を繰り返し進行する病気。潜伏期間が長いため、知らないうちに多くの人に
うつしてしまう可能性がある。
| 血 採 (検査) |
① クイックテスト:15 分で結果がわかる
・梅毒に対する抗体(免疫の有無)を検査。感染機会から6週以上経過していれば検出可能。
②TPHA+RPR 定量: 2日以内で結果がわかる
・梅毒に対する抗体価を数値として検出
・現在感染中か、過去に感染したことがあるかを鑑別することもできる。
・治療の効果の判定にも使用します。
| 抗 生 剤 に よ り 治 療 |
① アモキシシリン
② ミノマイシン
③ エリスロマイシン
4 週間以上内服
※治療開始後、数時間~数日以内に発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、リンパ節の腫大などが出現することがある(Jarish-Herxheime 反応)。が、急激なTP の死滅が原因であり、安静で軽快するため、梅毒の治療はそのまま続ける。
この時期の発熱や疼痛に対しては、内服等で軽減させていきます。
| 治療、治療効果の指標としてRPR、TPHA定量 |
・梅毒の治療効果はSTS 法の抗体価とよく相関するので、病期に応じた十分な治療を行った後は、
臨床症状の持続や再発がないこと、STS 法を定期的に追跡して、定量値が低下することを確認する。
・治療後6 ヵ月経過しても16 倍以上を示す時は、治療が不十分であるか、再感染であると考えられるので、再治療を行う。このような例はHIV 感染に併発した梅毒の場合に認められることが多いので、
HIV 抗体価の検査も行う必要がある。
| パ ー ト ナ ー の 追 跡 |
・第1、2 期顕症梅毒または感染後1 年以内の無症候梅毒と診断された患者と90 日以内に性的交渉があった場合には、パートナーの梅毒血清反応も行うべきである。
陰性の場合でも経過を観察するべきである。
| 最 後 に |
・十分な治療後も抗体価の低下に時間がかかるので、抗体が完全に低下するまでは、定期的な診察や検査を続けることが、再発や再感染を防ぐために必要である。
・梅毒患者は、HIV に感染しやすいのと同時に、HIV 感染者には梅毒が多く認められるので、すべての梅毒患者はHIV 抗体の検査を行うのが望ましい。
投稿者 seltage : 15:36
エイズ
| は じ め に |
HIV 感染症は、血液、体液(膣液、精液)等を介して感染します。
日本では現在、異性間、同性間の性的接触が主な感染経路となっております。
HIV ウィルスが体内に入ると人間の免疫(病気に対抗する力)を徐々に破壊していき、数年~10 数年経過すると免疫減少から易感染状態になります。この時期の感染をAIDS(免疫不全症候群)といいます。容易に感染を起こし、悪性腫瘍などの発症も起こします。最悪の場合は死に至ります。
日本でHIV 感染者とAIDS 患者の累計は1 万人を超え、毎年1000 人以上の新たに感染した人が見つかっていますが、ただしこれは、検査を受けて見つかった方であり、実際はこの何倍も新たに感染しているものと考えられています。(推定では新たに感染している人は3000 人とも5000 人ともいわれています。)
感染地は、大半が国内で感染しており、報告地では東京、関東近辺に集中しております。また若年層(10 ~20 代)の報告数も増加しており、コンドームの出荷数減少からも無防備な性行動が広がり、その結果が医学的現象として現れ始めたということでしょう。
日本以外の先進国では抗ウィルス剤の進歩により、1995 年以降AIDS 患者の数が減少していますが、国内ではAIDS 患者の数は依然多い状態です。
これは早期発見の遅れのためであり、検査体制の不備、性教育の不足などが指摘されています。このため献血でのHIV 感染の発見率は増加の一途をたどっており、2004 年度末で10 万人の献血者あたり1.68 人のHIV陽性者が発見されております。
日本の何十倍もHIV の流行がある海外ですら、この献血者10 万人対HIV 患者の率は1.0 未満であることを考えるとどれだけ高いかわかるかと思います。
検査を受ける機会が十分整備されていないことが原因であり、早期発見し、早期治療すればAIDS の進行を止められるのですが、早く検査を受けない、又は受けにくいという社会状態もあるかと思います。差別や偏見を恐れて、検査への足が鈍り、結局AIDS が発病するまで気がつかない、あるいは放っておくというケースが後を絶たないのです。
| 現 在 の 治 療 に 関 し て |
現在HIV を完全に消失させる薬は今のところなく、治療の基本は血液中のHIV の量を検出限界以下に抑えつづけることです。
このため抗HIV 剤による多剤併用療法(HAART と呼ばれる)を行うことが基本となります。
治療などの開発も日々進歩しており、早期に発見できれば治療しながらHIV ウィルスと共存する形で長く生きられることとなっております。
| 予 防 、 他 の 性 感 染 症 と の 関 連 に つ い て |
HIV 感染症に対する治療は年々進歩していますが、いまだ根治的治療は可能とはなっていません。このことからもいかに早期発見し、いかに予防していくかが最大のポイントとなります。
以前から尖圭コンジローマ、梅毒、性器ヘルペス、クラミジア、淋菌といったものの羅患者はHIV に数倍~数十倍感染しやすいといわれております。
しかし、これら従来の性感染症の羅患はコンドームの不使用、適切な感染予防をとらないためであり、同じような無防備な性的接触でHIV に感染する可能性を示しています。
oral sex からの適切なコンドームの使用、その他の性感染症の早期発見、早期治療が最も重要であることはいうまでもありません。
| 感 染 経 路 |
基本は性的接触で感染が成立します。
その他、血液、母体を介して感染するか、日常生活では感染しません。
性的接触の中で最も感染しやすいのは肛門性交(0.1 ~ 3%)です。次に膣性交の女性側(0.3 ~ 0.9%)、膣性交の男性側(0.1 ~ 0.2%)の順位です。
oral sex (fellatio、cunnilings) も男性側、女性側共に安全とはいえず、HIV 患者22 人を対象とした問診でoral sex のみが感染リスクと考えられた方が6.6% いたとの報告もあります。
| リ ス ク |
肛門性交(受け側)≫膣性交(受け側)>肛門性交(挿入側)>膣性交(挿入側)>fellatio(受け側)>fellatio(挿入側)
| 急 性 レ ト ロ ウ ィ ル ス 症 候 群 |
感染してから(性行為などがあってから)2 ~ 4 週経過後ひどい風邪、インフルエンザの様な症状が出現することがあり、HIV 感染者の約9 割に出現していると推定されている。この症状は他の急性ウィルス症候群と区別つきません。
ほとんどの症状が1 ~ 2 週間で自然消失してしまいます。
| 主 な 症 状 |
ⅰ. 発熱(96%) …39℃以上となることが多い
ⅱ. リンパ節腫大(74%)…左右対称に発現
ⅲ. 咽頭炎・発疹(70%)…とくに顔面、体幹、手、足などに発疹出現する
ⅳ. 筋肉、関節痛(54%)…風邪の時の体の痛みと同様
| そ の 他 |
下痢(32%)、頭痛(32%)、嘔吐、悪心(27%)、肝腫(14%)、口腔カンジタ(12%)、神経症状(12%)

投稿者 seltage : 14:52