2005年10月01日
淋病
| 解 説 |
・淋菌による性感染症で、男性の尿道炎と女性の子宮頸管炎が最も多い。
・淋菌は高温にも低温にも弱く、炭酸ガス要求性であるため、通常の環境では生存することができず、性感染症として、人から人へ感染するのが、主な感染経路である。
・重症例では、淋菌が管内性に上行し、男性では精巣上体炎、女性では淋菌性骨盤内感染症(PID)を起こすこともある。
・頻度は低いが、淋菌の菌血症から全身性に症状を伴う播種性淋菌感染症も引き起こす場合がある。
女性では腹膜炎を合併して肝周囲炎を、産道感染により、新生児結膜炎を引き起こすこともある。
・最近、オーラルセックスの増加に伴い、咽頭での保菌や感染が問題となっている。
・男女とも、性器に淋菌が証明された20 ~ 30%に淋菌の咽喉頭での検出がみられている。淋菌性結膜炎や直腸炎などもみられることがある。
・1 回の性行為による感染伝播率は約30%といわれている。淋菌に一度感染しても免疫は得られず、
再感染する。
・男性の淋菌感染症の罹患率は20 歳代後半にピークを認めるが、どの年代も羅患率は年々上昇傾向にあり、注意が必要である。
・女性の罹患率におけるピークは20 歳代前半に認め、10 歳代後半の罹患率は20 歳代後半より高く、 女性においては、男性に比べ、より若い世代に感染者が分布している。男性と同様にその罹患率は年々上昇傾向にある。
・先進国の中で、このように淋菌感染症が増加傾向を示しているのは、わが国のみといわれている。
| 淋 菌 感 染 症 の 病 態 |
| 淋 菌 が 原 因 と な る 疾 患 |
① 尿道炎
② 精巣上体炎
③ 子宮頸管炎
④ 骨盤内感染症(PID)
⑤ 咽喉頭炎
⑥ 結膜炎
⑦ 直腸炎
⑧ 播種性淋菌感染症(DGI)
| 臨 床 症 状 |
《男性》
〈淋菌性尿道炎〉
・感染機会から2 ~ 7 日の潜伏期間の後、尿道口より濃い黄白色の膿性の分泌物が多量に排出され、排尿痛や尿道口の発赤などの症状がみられる。
・20 ~ 30%はクラミジア感染症を合併している。
〈淋菌性精巣上体炎〉
・淋菌性尿道炎が治療されないと、尿道内の淋菌が管内性に上行し、精巣上体炎を起こす。
・初めは片側性であるが、治療されなければ両側性となり、治療後に無精子症を生じる場合がある。
・炎症症状は強く、陰嚢は手挙大に腫大し、局所の疼痛は歩行困難を訴えるほどである。
・尿道炎では発熱は認めないが、精巣上体炎を起こすと、発熱、悪寒戦慄、白血球増多症などの全身性炎症症状を伴う。
・尿道炎の場合と同様に、淋菌性精巣上体炎にクラミジア感染を合併している場合があるが、有効な薬剤が異なるので、淋菌とともにクラミジアの検査も行う必要がある。
《女性》
〈淋菌性子宮頸管炎〉
・淋菌の子宮頸管感染により分泌物を生じるが、症状や徴候がみられないことがあるので、感染女性の多くは自覚症状がなく、男性の淋菌性尿道炎と異なって、潜伏期も判然としないことが多い。
・粘液性、膿性の分泌物が外子宮口付近にみられる場合もあり、感染がバルトリン腺や直腸に及ぶ場合がある。バルトリン腺炎では局所の腫大、疼痛などの炎症症状が著明である。
・感染が管内性に拡大して骨盤内炎症性疾患を起こすと、半数程度に発熱、腹部仙痛による急性腹症を生じ、治りづらい膿瘍を形成したり、長く続く子宮の痛みや不妊の原因になったりする場合もある。
・一般的に、女性は感染しても無症状の場合が多いので、無治療のまま、男性の淋菌感染症の主たる感染源となることが多い。
〈骨盤内炎症性疾患(PID)
・子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)、骨盤腹膜炎等がある。
・淋菌による骨盤内炎症性疾患の病態(発熱、下腹部痛、局所の自他覚症状)は、クラミジアによるものより強いが、症状が自覚されない場合があり、注意を要する。
《男性・女性》
〈淋菌性咽頭感染〉
・オーラルセックスの増加により、淋菌が咽頭から検出される症例が増加しており、男女問わず、 性器淋菌感染者の約30%の咽頭から淋菌が検出される。
・淋菌が咽頭に感染していても炎症症状が自覚されない場合が多い。
・咽頭の淋菌感染は、治療後の性器感染の再発の原因となるので、感染機会がなく再発した場合には、咽頭感染も疑うべきである。
・オーラルセックスで口中に淋菌が感染すれば、咽頭炎などを起こし、風邪などの症状がでる。
〈播種性淋菌感染症(DGI)〉
・菌血症を伴う全身性の淋菌感染症である。
・関節炎、皮膚炎症候群では、典型的には軽度の発熱、倦怠、移動性多発関節痛、いくつかの膿疱性皮膚病変を四肢末端に起こす。
・まれに心膜炎、心内膜炎、髄膜炎および肝周囲炎が起こる。
〈淋菌性結膜炎〉
・淋菌による眼感染症は新生児に最も頻繁に起こる(分娩時の産道感染による)。成人ではまれであるが、重症の化膿性結膜炎を引き起こす。淋菌との直接接触、または淋菌感染中の性器からの自家接種により起こる。
・通常は片眼性である。症状としては重篤な眼瞼浮腫に続く、結膜浮腫と大量の膿性浸出物などがみられる。感染後12 ~ 48 時間で発症するとされている。まれな合併症として角膜の潰瘍や膿瘍、穿孔などのほか、全眼球炎や失明などがみられることがある。
〈淋菌性直腸炎〉
・肛門性交によって起こる。
・直腸の淋菌感染症の症状としては、肛門のかゆみ、痛み、出血、分泌物、ときに腹痛がみられることがある。
| 感 染 経 路 |
・性行為、キス、オーラルセックスにより感染する。タオルや衣類からも感染する可能性がある。
・感染源においては、風俗女性が60%を占め、一般女性の40%より多い。
・膣性交のみが23.8%、口腔性交のみが43.9%、その両方が32.3%である。
・淋菌性尿道炎においては、口腔性交のみを介した感染者の方が膣性交のみを介した感染者より多い。
| 検 査 |
《男性》
a. 淋菌性尿道炎
b. 淋菌性精巣上体炎
・簡易尿テスト(尿沈渣白血球は多数認められるが、中間尿が採取された時は白血球を認めない場合があり、尿検査時は、初尿を採取する。)
・PCR 法(DNA を使った方法)
《女性》
a. 淋菌性子宮頸管炎
・子宮頸管からの検出は、膣鏡を用いて頸管にスワブを挿入し、膣壁にふれないように抜去して検体とする。
《男性・女性》
淋菌性咽頭感染
・淋菌の検出は、両側扁桃陰窩、咽頭後壁を擦過して採取した咽頭スワブを検体とする(SDA 法)
| 治 療 |
・特に、淋菌性尿道炎に対する治療においては、抗生物質を内服するより、注射薬の十分量を1 回のみ投与し、淋菌を確実に除菌する単回投与療法が推奨されている。
a. ペニシリン系抗生剤 約7~10日間
b. スペクチノマイシン系,セフェム系 点滴
c. アジスロマイシン 単回投与(内服)
・症状が全くなくなっても、副作用が出ない限り、抗生物質は医師に処方された分をきちんと服用しきることが大切である。途中で服薬を中止すると、再び淋菌が勢いを盛り返し、完治しない可能性がある。
耐性菌が増加しており、内服の単回投与、注射の単回投与をすすめてます。治療後、1 ヶ月後くらいに症状消失していても尿検査で淋菌の消失を確認してはじめて、治癒したものと判断するのがよいです。
| 予 防 |
・性交渉においては、最初から最後までコンドームを使用すべきである。ただし、コンドームはすべての性感染症を完全に防ぐものではない。破れたり、はずれたりする可能性があるからである。また、感染部位が、コンドームに覆われない部位にあった場合には、その感染部位から感染してしまう可能性がある。
・自分が淋菌感染症あるいは、他の性感染症であることがわかった場合には、パートナーに告げて、性感染症の検査を受けることを勧めるべきである。相手も重い合併症となる危険性を減ずることができ、自分も相手から再び感染させられる危険性を減ずることができる。
| 最 後 に |
・古典的な性感染症の1 つである淋菌感染症が最近わが国では増加傾向にあり、その増加の要因として感染源や性交形態の変化、各種薬剤耐性淋菌の増加などがあげられる。
淋菌感染症のさらなる蔓延を防ぐためには、コンドームの正しい使用が重要である。
投稿者 seltage : 2005年10月01日 19:03